私が以前勤めていたある会社は、若い社員が多いのに、元気・覇気がまったくない会社でした。
いわゆる「おとなしい」人たちが多かったんですね。
偶然そういう人たちが集まったとしたら、奇跡、というぐらい、おとなしい若者たちだらけでした。
おとなしい人たちが多い会社の理由は、すぐわかりました。
経営者が、『話を聴かない人』だったのです。
ワンマン経営者だった先代の跡を継いだ社長は、社員が問題を報告しに行っても、ろくに話を聴きませんでした。
「で、結論はなに?」
とイライラした表情で話を急かしたり、パソコンや携帯の画面を見ながら聴くこともしょっちゅう。
話の途中で説教したり、自分の意見をまくしたてたり、話題を変えることも、しばしばありました。
それは本当にひどいものでした。
そういうコミュニケーションが繰り返されて、社員はみんな、社長に話をしに行かなくなりました。
上の人間に話を聴いてもらえないと、社員は元気をなくします。
やる気も消え失せます。
目の前に問題があっても、
「どうせ取り合ってもらえないから・・・」
と、報告しなくなります。
対話をしなくなるのです。
問題が大きくなってから発覚し、
「なんでこんな大事なこと、もっと早く報告しなかったんだ!?」
と、社長は怒りをぶちまけてましたが、社員は心の中でみんなこう思っていました。
「アンタが話を聴かないからだろう」と。
「俺たち(私たち)は何度もSOSを出しに言ってたよ」と。
今、世間ではパワハラ問題が話題になっていますが、社員の話を聴かないというのも、パワハラに繋がると私は思っています。
その会社で管理職になった私は、『コミュニケーション研修』を提案します。
そのとき来てもらったのが、当協会代表理事の、松橋です。
研修の事前の打ち合わせで、
「社長は、『うちの社員はコミュニケーション能力がない』と嘆いてますが、
その理由は、他ならぬ経営者が話を聴かないからなんです。」
という話をしました。
そしたら、研修では、自分の話をする実習と、聴く実習をたくさん取ってくれました。
コミュニケーション研修に対して、最初は不安そうに、めんどくさそうにしてた社員の顔が、研修が進む中で、どんどん明るくなっていきました。
研修後、松橋さんが、とある社員に研修の感想を尋ねたところ、こんな答えが返ってきました。
「こんなに自分の話を話したの、聴いてもらったの、初めてです!スッキリしました!」
あの晴れやかな表情は、今でも忘れられません。
ちなみに、このコミュニケーション研修、本当は社長に一番受けてほしかったんだけど、『体調不良』という理由で、参加しませんでした。
あなたにこそ必要な研修だったのに・・・。
それがとても残念で、心残りでした。
経営者が、上司が、話を聴いてくれる人だったら、いきいきと働ける社員は多くなると思います。
上の立場にいる人にも、聴き方の技術はぜひ身に着けてほしいです。
コメント